傾いた本棚

研究,プログラミング,勉強,教育の話など

機械安全の考え方を使って忘れ物を減らす

機械のセーフティ(安全)に関する講座をうけてから忘れ物が減った

実験・測定に用いる機器には危険がつきものである。会社で機械を安全に扱うための講習を受ける機会があったので、受講した。

意外なことに、その時聞いた内容のおかげで、

  • 「頻繁にスマホを忘れて忘れ物センターや駅に電話する」
  • 「出先に荷物をおいてきてしまう」

といったことが減っていて、機械の安全な利用とは関係ないところでも役立ったので、大元の誰でもわかる考え方の部分だけを共有する。

講習で受けた内容のうち、日常生活でも活かせそうな部分

講習では、ISO12100 に関する概要の説明を受けた。ISO12100は、あらゆる機械類に適用可能な安全性の考え方をまとめた基本規格である。これをベースとして、それぞれ機械分類(自動車・医療機器・ロボットなど)や機械そのものの規格が派生していくことになっている。

この中で

  • 「危険源に近づかないように・触れないように気をつけましょう」という教育を今まで国内では重視していたが、それでは引き継ぎがうまく行われなかったり、その説明を聞いていなかった・忘れてしまう人がいるので、これを中心とするのは良くないという経緯があった

  • 現在は、注意喚起や教育でなんとかしようとする部分は最小限とし、その前に「危険源を減らす・なくす・危険源に近づけなくする」等のシステムによる解決を最優先し、システムでは対応できない部分を注意喚起や教育によってカバーするという考え方が取り入れられている。

日常生活や仕事のシーンでの応用

まずはシステム的に解決できないかを先に考え、意識して・気をつけてやらなければならない要素は最小限にするという考え方を、日常生活や仕事に応用しようとしてみた。

例1: 出先にスマホを置いてきてしまう

  • 「出る前にスマホを持っているかチェックする」だと局所的すぎる・そもそも持っていることを意識していなければチェックするという発想が湧かない。安全講習の考え方に則って対策を考えると以下のようになる。 →システム的な解決: スマホにショルダー紐をつけ、確認を忘れても所持した状態が保たれるようにする →注意による解決:「スマホを持っているかチェックする」→「なんの持ち物を持ってきていようが、店を出る前に指差し確認をする

例2: 「フォーム提出時に特定の内容を記入するように指示しているがなかなか書いてくれない」

  • システムによる解決: 本当に人為的に書かなければいけないことなのか確認し、自動挿入やシステム内検索で対応ができないかを検討する
  • システムによる解決: 必須で書くべき内容はフォームを分けて別途作成し、それを書かなければ提出ができなくする

例3: 長期目標や線表を書いてもだんだん遅れる・守れなくなってくる

  • システムによる解決: 長期目標や可変する目標以外に、いつでも変わらない不変目標を作る。

終わりに

まずシステムとして意識しなくても問題が発生しないようにするという考え方は、忘れ物を減らす以外にも使えると思い、日々暮らしの中でまずシステム的に何かできないかを考えてから行動するようになった。他にも、もとは工業用に考えられたルールが日常生活をより過ごしやすくするためにできることがあれば書き残していきたい。

『創造性を高める休み方』をまとめた【読書日記】

休む時間は創造性を高めるためにある

シリコンバレー式 よい休息」という本を読んだ。

「休む時間は、『体や脳を休めるための時間』としてだけでなく、『創造性を高めるための時間』でもある」という主張が書かれている。 

科学者・小説家など、創造性に関わる仕事をする人が共通して行っていた「休み方」の共通点をまとめ、その「休み方」がなぜ創造性を高めるのかを、科学的な観点からまとめている。

クリエイティブな仕事に関係する多くの人に役立ちそうな内容で良書だったので、内容をまとめつつ、創造性に役立つ休み方についてさらに知るための類書をまとめて紹介する。

シリコンバレー式 よい休息

創造性を高める習慣のリスト

この本では、多くの科学者や小説家、偉人等が行っていた日々の休み方として、

  • 「約4時間の集中的に行う仕事」
  • 「モーニングルーティン(とりわけ早朝)」
  • 「散歩」
  • 「昼寝」
  • 「中断」
  • 「睡眠」
  • 「運動」
  • 「深い遊び」
  • 「長期休暇」

を挙げている。細かい科学者や小説家等のエピソード、科学的な説明は省略するが、印象に残った部分だけ簡単にまとめる。

まず、多くの小説家が日課として書く小説にかける時間をおよそ全体で4時間程度としており、その時間に深く集中して書き上げるよう日課を作っていたケースが多い。科学者の自伝等でもそのようなエピソードが多く見られた (4時間の集中した仕事)。

そして、そのような集中する時間を多くの人が朝、とりわけ早朝の日課として設定しており (モーニングルーティン)、重要な仕事や成果に結びつく仕事をなるべく午前中に済ませていたケースが多いと紹介されていた。

午前中の仕事を済ませたあと、長めの散歩や昼寝に時間を使う科学者や政治家に関するエピソードが多数紹介されている。

上のリストに挙げられていないことで共通する点として、多くの創造的な仕事をする人が、散歩の間紙のメモを持って、いつでも湧いたアイデアを書き留めることができるようにしていた。

本に書かれていたことではないが、最近ではOpen AIのサム・アルトマンが必ず小さな紙のメモ帳を持ち歩いていることも話題となっていた。

科学的に業績を残した人の多くが、学生の頃から・または大人になってから運動をする習慣があるという共通点についても記述があり、実際に行動科学系の人が調査した論文も出ているらしい。

そのような運動でなくても、「仕事とは一見無関係な、集中を要する趣味」または「仕事で習得したスキルを隣接する分野や創作で流用できる趣味」をもち、長期間没頭しているケースも多いと説明がある (深い遊び)。

多くのクリエイティブな人たちが上記で紹介したような日課を持っているが、これらの日課は平日・休日問わず繰り返されていたと書かれている。

この本をもとにした創造的な休み方の提案と類書の紹介

「約4時間の集中的に行う仕事」については、本では他人事の具体例の説明がメインであったが、もしこのように短い時間で集中して重要な仕事をする方法を知りたい場合、カル・ニューポートはそのような働き方を「Deep Work」とよび、要点や取り組み方をまとめている。

成果を出すのに重要な仕事を、1.5 時間ずつ2回に分けて一日のうち早い時間に終わらせ、頭を使わなくてもできる仕事は Deep Workを設定した時間分だけこなしてからやるという内容であった。

Deep Work: Rules for Focused Success in a Distracted World

シリコンバレー式 よい休息」では、休み方を順不同でまとめているが、体の回復・充電を含めて休み方について考えたい場合、これらをどのような順序で行ったらいいかについては、片野 秀樹 (著)の「休養学」に、効果的な休み方の順序に関する解説が載っている。

この本では、休養を、「体や脳の回復など、回復に重点をあてた消極的な休息(パッシブレスト)」、「体を動かしたりストレッチをする、出かけるなど積極的な休息(アクティブレスト)」の2つに分け、消極的な休息を行ってある程度体力を回復した後に、アクティブレストを行うことで、ただ休むだけの休日よりも翌日以降の活力を高められることを説明している。

例えば、「シリコンバレー式 よい休息」で紹介のあった休み方のうち、昼寝、睡眠等はパッシブレスト、長めの散歩や運動、深い遊びはアクティブレストとして分けて、使い分けるといいかもしれない。

休養学―あなたを疲れから救う

「平日・休日問わず同じ日課を守る」とあったが、休みの日も同じような生活では結果として休まらなくなってしまうのでは?と思う人もいるかもしれない。

例えば文章を書く仕事の人であれば、

  • 仕事の日は任されている文章を書く
  • 休みの日は自分の書きたい小説とかブログを書いてみる

と行った形で、取り組むことを変えながら日課を同じように守ることもできるかもしれないと思った。

技術者であれば、

  • 仕事の日は、任されている技術開発や論文執筆をする
  • 休みの日は、仕事に関係するかわからない技術を勉強してみる、ちょっと違う分野の勉強をあえてしてみる、全く仕事と関係ない創作をやってみる

みたいな形で、同じ時間を使っていても、休みの一環としてやってみることを変えることができるかもしれない。

このような、「役に立つとは限らないことを、厳しい目標や目的を決めずにゆっくり学び続ける」ことのヒントとなる考え方を、岸見一郎先生が「ゆっくり学ぶ」という本で紹介している。 この本では、受験のようなゴールや競争を意識して学ぶことに慣れきった私たちに、競争や成功にとらわれず、学ぶことそのものを楽しむ学び方についてヒントを与えてくれる。

ゆっくり学ぶ 人生が変わる知の作り方 (集英社文庫)

シリコンバレー式 よい休息」に出てくる偉人や科学者、小説家の多くはスマホ登場以前に活躍していた人が多いので、休み方とスマホの関わり方に関してまとめた本として、「戦略的暇」「スマホ時代の哲学」がある。

「戦略的暇」では、デジタルデトックスの考え方を軸として、スマホをおいて戦略的に暇な時間を確保することの重要性、デジタルデトックスのイベントとして著者らが実践した具体例が書かれている。

戦略的暇

スマホ時代の哲学」では、スマホに注意力を奪われ、主体的に行動が取れなくなっている我々に対して、「自分でコントロールできる(自治権のある)趣味を持つこと」の重要性を提起している。

増補改訂版 スマホ時代の哲学 なぜ不安や退屈をスマホで埋めてしまうのか (ディスカヴァー携書)

これらのスマホと休み方に関する本を読んでいると、「そういえば最近ぼーっとすることが全然なくなったな」と感じる。スマホを使っていなかった頃は、授業中に外を見てボーッとするとか、自室から外を見てボーッとすることが結構日常的にあったなと思うけれども、そんな時間が減っていることに危機感を覚える。

今回は創造的な仕事に役立ちそうな習慣の本をメインに類書を紹介しているが、活躍している人々の習慣をたくさん知りたければ、「天才たちの習慣」という本に大体書かれている。この本は個人ごとの習慣を列挙しているが、今回紹介した「シリコンバレー式 よい休息」では、それらを体系的にまとめて科学的な根拠を加えたような感じになっている。

天才たちの日課

紹介した本の多くが、メモを取ること、書く時間を作ることをすすめているのも興味深い。よいメモの取り方・書き方については、以下のブログでまとめている。

ryoiijima.hatenablog.com

「創造性を高めるために休む」という選択肢

たくさん働いていることがえらいとされがちな現代社会において、休むことは甘え、後ろめたいものとして捉えられがちである。私たちは、「体を休める」休み方以外に、「創造性を高めるためにあえて休む」という選択肢があるということ、具体的にどうすれば創造性を高める休み方について説明があり、良書だった。

(原書には「シリコンバレー式」とタイトルにはついてないので、このような意識高い系のタイトルが追加でついていることでクリエイティブな人たちに有益な本としてわかりづらいのではないかと感じる)

いきなりすべての日課を自分の習慣として身につけることは難しいと思いますが、なにか皆さんのクリエイティブな活動に役立てば幸いです。ぜひ本書も読んでみてください。

「異世界転生感」を味わうために、文法を学ばずにラテン語をやってみた

概要

  • 外国語を学ぶ際、体系的な文法を学んでから会話やリーティングに活かすのが普通だが、なんか飽きるし面白くない
  • 実は文法を先に学ばなくても、なんとなくわかっていくことの楽しさを感じられるのではないか?について検証
  • 200日間学習を継続することができ、文法に対して苦手意識も感じずに取り組めた

はじめに

語学を学ぶ際の王道的な方法として、まず語彙と文法を学んで、それから実際の文章や長文に触れたり、リスニングをしてみたりということが普通になっている。

実は文法を学ばずに言語に触れていって、なんとなくこうかも、と思いながらやっていく方が楽しいのではないか?と思い、あえて文法を学ばずに知らない言語を学んでみることにした。

取り組んでみたきっかけ

やってみた理由として、異世界転生ものや、異星人と遭遇するSFで、言語がわからないまま通じ合っていく様子を見て、本当にできるのかな?と気になったこともある。

さらに、以前やってみたゲームで、異世界に迷い込んだという設定で、エスペラント語を会話の中で推測しながら学ぶというものがあり、面白かったというのもある。

Steam:The Expression Amrilato

そもそも、私たちは母語を学ぶときに文法を学んでから身につけたわけではないし、その状況を(幼少時には)知らずうちに楽しんでいた可能性もある。どういうところが面白いのかを考えながら取り組んでみた。

  • 選んだ言語:ラテン語

  • 検証する仮説:実は文法を学ばずに、わからなさに振り回されながら学んでいく方が楽しいのではないか?

  • 検証方法:6ヶ月間、文法に触れずにDuolingoに取り組む。取り組む時間は1日最低5分とする。適当に興味を持った文献とか論文をざっと眺めてみたり、ラテン語のニュースを見てみたりする。文法書を引くタイミングは、その規則を自分で見つけ、「こういう規則ではないか?」と仮説を立てて、興味を持ってからに限定する。

やってみた結果

意外と続き、Duolingoのラテン語コースをすべて修了してしまった(注: マイナーな言語なので、Section は2つぶんだけ)。続けた日数は200日。これ以上はちゃんと文法を学んでから続けたほうがいいだろうと思えたので、アプリはやめてしまった。その後、ラテン語の授業を履修したり、ラテン語の文法書を買って読むということもするようになった。多分はじめから文法書や教科書にあたろうとしていたら、早々に飽きていたかもしれない。

アプリ内に継続させるための工夫もたくさんあったのも要因だと思う

Section 3から先は、すべてのsection が修了した人向けの復習コース

英語↔ラテン語で意味の対応づけを学ぶ

Duolingo アプリ内より各画像引用

やっている過程で感じたこと

  • 文法を学ばないので、「これってこういう規則なのかな?」と予測しながら文に触れていくことになる。ある程度もやもやしたまま進めて、本当に規則に興味が湧いてから文法書を引く、というスタイルにしていたので、文法書を面白がりながら読むことができた。

  • これまで語学学習は、文法を学ぶ過程は通るべき苦行というイメージがあったが、自分で規則性を発見する楽しみを体験することができた。最初に文法を分析して規則を見つけていくのは楽しい作業であったのかもしれない。

  • わからなさに振り回されるのが楽しい。わからないことにイライラするのは、テストや点数などの結果に惑わされるからで、趣味で自分のペースでわかっていけばいいのだと思うと結構楽しい。私はよく主人公が記憶を失っている小説を面白がって読むので、記憶を失っている主人公を追体験しているような気分でもあった。

おわりに

検証結果: 文法を学ばずにとりあえずわからないまま触れていくという方法でも、その言語を楽しむことができた。逆に法則を見つけていく楽しみがあると思えた。

文法について詳細に学ばないでとりあえず文章に触れてみて、その規則性をあぶり出そうとする方法でやると、まず第一にその言語に対する興味をもつという点でとてもいいと思った。

わたしたちは語学を学ぶ際に、その言語に興味を持つ前に文法など体系的に整理されきっているものに触れることになることが多いと思うが、あえて体系的な知識を持たずに、わからなさに振り回されるのもいいんじゃないかと思える。

みなさんも「わからない」を楽しむためにぜひやってみて下さい。

研究が行き詰まったら読む本

概要

  • 研究が行き詰まったときの行動パターンを挙げ,なるべく早く脱却するために役立つ本や考え方をまとめる.
  • 「向いていないのかもしれない」と判断する前に,研究に対するアプローチを正しくすることで解消することを目指す.

はじめに

恥ずかしながら,

  • 自分で考えた研究テーマ・計画が迷走する
  • 焦って手を動かした結果,論文としてまとまらないデータばかりを集めてしまう
  • 目的とは関係ない勉強に時間を費やしすぎてしまう

などの経験をこれまでに複数回繰り返してきました.

そのたびに研究の進め方や方向性に悩み,本を読み,試してみることを繰り返して,ようやく論文を出すことができる状態まで復帰(?)できたため,研究の進め方を見直す上で参考にした本や資料をまとめておきたいと思います.同じような感覚になった人・または研究室内で行き詰まった学生や後輩を助ける立場にある人に参考になればと思います.

最後に,新しいテーマで取り組み直す際に,個人的に試してみてよかった工夫をまとめています.

研究が行き詰まるときの感覚・感じ方・兆候

以下では,研究が行き詰まったときに感じたことや行動パターンを正直に記入し,行き詰まっているのかどうかを判断するポイントを提供します.

  • 研究に関する草案・原稿を書いている時の時間の進みがとても遅く感じる
  • 「このテーマが終わったら次はもっと良いテーマで研究をしよう」と思い,適当にまとめようとする(がまとまらない・良いデータが得られない)
  • 「指導教員・メンター・共著者は自分の無能さに呆れているのではないか」という感覚に陥る
  • 研究以外のことに専念する状態が3か月以上続く(一日の時間のうち大部分が研究以外のことに費やされる)
  • 先に重要ではない事務的な作業に手を付けてしまう日が続く
  • 手を動かしているのに前進している感覚が得られない・空回りしている感じがする
  • インターン・授業の課題など,他人が設定した目的や計画に従って過ごす状態に満足する
  • 途方もなく先が見えないことに取り組み続けている感じがする
  • 研究の過程を楽しむことを忘れ、結果そのものばかりを気にしてしまう

役に立った本・資料の一覧

うまくいかないときの判断の仕方・基準などがまとまっているもの

なぜあなたの研究は進まないのか?

→ 研究がうまくいかない・行き詰まる原因を Q&A 形式でまとめ,その段階においてはどのように対処すればいいのかを整理してまとめている本です.

The Dip: The extraordinary benefits of knowing when to quit (and when to stick) (English Edition)

→ うまくいっていない原因が,「それ以上やっても何も得られないところで頑張っている」のか,成長途中に生じる「dip」(一時的にうまくいかなくなるように見える状態)のためにうまくいっていないように見えるのかを見分ける基準の話などがありました.

着想・アイディアの考え方

リサーチのはじめかた ――「きみの問い」を見つけ、育て、伝える方法

→ 実際に深堀りしたり,実験を進める前に何をするべきなのかを詳細に説明しています.「これは指導教員や査読者にウケるのではないか」という考え方ではなく,あくまで自分の興味ファーストで出発し,文献の関連付けや深める作業をしていくべきであるという主張がされています.

新版 思考の整理学 (ちくま文庫)

→ 読んだ文献を整理し,アイデアを出すカード法を説明しています.アイデアを考えるためには,十分に文献を調査したあとに,「寝かせる」時間が必要であるとしています.

面白くて刺激的な論文のためのリサーチ・クエスチョンの作り方と育て方 第2版 論文刊行ゲームを超えて

→ 「それは面白いですね」レベルではなく,思わず「面白い!」と言いたくなるようなリサーチクエスチョンを考えるための方法として,問題化という手法について挙げています.

研究の進め方・研究についての考え方全体

研究の育て方: ゴールとプロセスの「見える化」

→ テーマ出しの方法から,テーマの選定,研究の進め方,論文の書き方まで体系的にまとまっています.テーマは意義・新規性・実現可能性のバランスが取れたものを選ぶべきであるという主張があります.

博士号のとり方[第7版]―学生と指導教員のための実践ハンドブック―

→ 「指導教員の先生はそろそろ自分の無能さに呆れているのではないか……」と感じたときに読みました.たいていそう感じるときは自分が行き詰まっている・パニックになっているだけで,自分の勘違いであったことに気づけました.先生がどんなことを考えて指導してくれているのかがわかってよかったです.

研究資料の整理方法

メモをとれば財産になる (日経ビジネス人文庫)

→ 読んだ文献を体系的に整理する方法として Zettelkastenというメモ術がまとめられています.以下に詳細のレビューを書きました.1年半くらいはこの方法+Obsidianでメモを取るようになりました.

ryoiijima.hatenablog.com

 計画の立て方・計画の管理・進め方等

Brian Kennett, Planning and Managing Scientific Research: A guide for the beginning researcher, ANU Press, 2014

行き詰まったときに試してみてよかった工夫

今のテーマから俯瞰したらどうなるかを試す

研究が行き詰まっている場合,視野が狭くなっていることが多いです.一旦今の研究を進めるのをやめて,その周辺で何が起きているか,自分の研究から少し距離を広げるとどんな研究が見つかるかを,網羅的に調査し直して,テーマ設定や前提を考え直すのがいいと思います.

誰かに丸投げするつもりで計画書を作る

「自分がもしそのプロジェクトを遂行できなくなったら,何人くらいがそれを引き継げそうか?」を意識して計画を立てると,自分にとっても遂行しやすい計画になるという話を読みました.具体的に周りの後輩や先輩,共著者を浮かべて,代わりにやってもらうことを想定しながら計画を立てるようにすると,スムーズに作業が進みました.

たとえば,

次の週に(自分が)書くプログラムのテンプレートを作成しておく できるだけ単純作業となるように作業を分割する なぜその作業が必要なのかを文書で説明しておく

ような工夫をすることで,次の研究にも使えるテンプレートができたり,書く際に論文の草案としても使えるドキュメントができたりします.

進捗を報告する仕組みを作る

所属しているSlackに,元生徒が #progress-report というチャンネルを作ってくれたので,一日のはじめにやるべきことをまとめてそこに記入する・終わったらその欄に✓をつけるという習慣ができました.

自分が今日何をするのかを一日のはじめに意識するようになり,途中で作業を投げ出す・他のことに手をつけてしまう・どうでもいい事務作業に時間をかけてしまうというケースが減りました.

Slackには,主に自分より年下の人が所属しており,彼らがもし将来,自分と同じくらいの年齢になった際に,「いまの(計画性がなく迷走しがちな)自分のようにはなってほしくない」という感覚で自分に厳しく予定を決められるようになりました.

うまくいかなさを相談できる人を作る

研究が行き詰まったとき・論文がまとまらないときに,「修士・博士課程なのにこんなことで悩んでいるなんて……」と感じることが何度もありましたが,そのレベルの内容の相談を聞いてくれる人を周りに持つことが大事だと気付かされました.今まで自分がいかに頼りベタだったか,弱音をはくことをためらっていたかを思い知らされました.何でも本を読んで自分で解決しようとするのではなく,たまには頼り上手な人を見習って周りに相談しようと思います.

結果だけを気にするのではなく、過程を楽しむつもりで取り組む

これまでうまくいかなかったり,長続きしなかったことを振り返ると,勝敗やレート,点数など,結果を過度に気にして,その結果に至るまでの過程を十分に楽しめていなかったと感じます.藤井聡太竜王・名人がインタビューで以下のようにいっていたそうですが,本当にそのとおりだと感じました.「結果よりも内容を重視する」「過程を楽しむ」ことを忘れずに取り組もうと思います.

そうですね。結果ばかりを求めてしまうと、逆にそれが出ない時にモチベーションを維持するのが難しくなってしまうのかな、と思っているので。

結果よりも、内容を重視して。そうすることで改善していけるところが新たに見つかると思っているので、それをなんとかモチベーションにしてやっていきたいと思っています。

文字引用: https://grapee.jp/980025

動画引用: https://youtu.be/XmMOmnU_fME

サイドプロジェクトを作る

論文になるかどうかもわからない,そもそも発表もしないかもしれないと思えてくるようなサイドプロジェクトを持つことがいいと思います.それはメインテーマと関連していてもいいし,趣味として全く関係ない分野を追求してみるのもいいかもしれません.自分の目先のテーマの進捗が出ていないときに,知的好奇心を維持し続けるために,気晴らしの研究(または知的探究)のテーマを持っておくと,心を穏やかに保つことができる気がします.本ブログで紹介した「思考の整理学」でも,以下のように述べられています.

「テーマはひとつでは多すぎる。すくなくとも、二つ、できれば、三つもって、スタートしてほしい」。 (中略)

ひとつだけだと、見つめたナベのようになる。これがうまく行かないと、あとがない。こだわりができる。妙に力む。頭の働きものびのびしない。ところが、もし、これがいけなくとも、代りがあるさ、と思っていると、気が楽だ。テーマ同士を競争させる。いちばん伸びそうなものにする。さて、どれがいいか、そんな風に考えると、テーマの方から近づいてくる。

外山滋比古. 思考の整理学 (ちくま文庫) (p.43). 筑摩書房. 1983

おわりに

  • 前進している感覚が得られるように目標・計画を立てること
  • それを他人にとっても実行しやすい形にしてスムーズに取り組めること
  • 結果を過度に気にせず内容を良くする過程を楽しむこと

が重要だと感じました.

同じような悩みを持つ人がいるかはわかりませんが,テーマ変更のタイミング,研究が進まないと感じたタイミングなどで悩んだ際に参考になればと思います.

改めて,行き詰まったときに相談にのってくれた指導教員の先生や,共著の方,友だち,モチベーションのきっかけをくれた後輩や学生に感謝したいと思います.今後も日々執筆する習慣を作って,着想を考えてから,論文としてまとめるまでの流れを自分でできるように精進したいと思います.

(本ブログは学生時代に書いたものを加筆・修正したものです)

国内なのに片道6時間かけて「カツオの藁焼き体験」に行ってきた

わら焼きの美味しさに魅せられて

ある程度料理をしていると、外食時に、「これだったら自分でも作れるんじゃないか?」と考えて、家でやってみるのが楽しみの一つとなる。

そんな中、初めてカツオの(わら)焼きを食べたときの感動は今でも忘れられない。口に入れた瞬間に感じる"わら"の匂いとともに、塩のきいた新鮮なカツオの味。 もともとそんなにグルメだったわけでもない。それでもカツオの藁焼きは、それ以来大好きな食べ物の1つとなった。

藁焼きの作り方を調べると、わらが火柱を上げ、カツオを炙っている様子の動画がみつかる。いくら料理に自信があろうと、安全の問題でこれは自宅ではできない。死ぬまでにやりたいことリストに、「カツオの藁焼き体験」が追加された瞬間であった。

しばらくして、誕生日プレゼントに何がほしいか彼女に聞かれた際、あれこれ悩んだ末、「カツオの藁焼き体験」がしたいと頼み込んで、誕生日旅行として行ってみることにした。

  • お邪魔した時期: 3月下旬
  • 旅行期間: 2泊3日

東京から最も時間のかかる場所:土佐清

勢いで藁焼き体験を申し込んだものの、行き方を調べると、想像以上に時間がかかることがわかってきた。羽田〜高知龍馬空港まで2時間、空港から土佐清水まで3〜4時間車で移動する必要がある。愛媛から行ったらいいのではないかと色々考えたが、どのルートも結局最低6時間はかかってしまうらしい。

佐清水は「東京から最も時間のかかる場所」の一つと言われるくらい時間がかかるという記事も見つけた。

ameblo.jp

それでも行こうと思ったのは、

  • カツオの藁焼き体験ができるところがほぼ高知県内に限られている
  • これは自分でも作ってみて食べたい
  • 自宅で作るのは安全上ほぼ不可能
  • 藁焼きの香りは、冷凍すると失われてしまうので、藁焼き調理をした直後に食べたい
  • 年を取ったら山道を4時間走り続ける(合計片道6時間、往復12時間かけて旅行する)のも無理かもしれないし、20代のうちに行っておいたほうがいいかもしれない

そんな理由から、高知県土佐清水市に向かったのであった。

藁焼きワールド

藁焼きの体験をさせていただいたのは、「藁焼きワールド」というお店。土佐清水市ふるさと納税で提供されているカツオのたたきの一部はここで作られている。

藁焼きかつおのたたき 大サイズ1節(約400g~500g)ポン酢1本付セット カツオのたたき 鰹 刺身 高知 海産 冷凍【R01410】: 土佐清水市ANAのふるさと納税|ANAのマイルが「貯まる」

優しい店主の方に教えていただきながら、カツオを丸ごと3枚おろしにして、藁焼き調理をするまですべて体験させていただいた。

  • 体験料金: 鰹をさばいてから藁焼き体験、食事(魚飯、アラ汁付き)
    • 材料費:鰹1尾(2-2.5kg) 3,500円
    • 参加費用:1,200円/人(小学生700円/人)

藁焼き体験 | 土佐清水地魚市場藁焼きワールド

カツオを三枚おろしにする方法を店主の方に伝授していただいている様子

藁焼き体験をする様子

これを自宅でやったら大惨事になりそうだ

いただきます

藁焼きしたカツオは食べたい分だけ自分で切って盛り付ける。調子に乗って切りすぎて、2人で4人分位を頑張って食べることに。(その少し前に寿司や刺身を自宅で作っていたので、筋の残らない切り方を知っておいて良かった)

自分で盛り付けてたべたカツオの藁焼き ご飯や味噌汁はサービスで出していただきました(ありがとうございました)

作りたてで藁の香りが残っていて、更に自分で調理したものを食べるのは格段に美味しかった。お伺いした時期(3月)はちょうど初鰹の時期らしく、今朝採れたての新鮮なカツオを使ってくださったとのことで、新鮮でとても美味しかった。残った柵もぜひ食べたいということで、冷凍して家に送ってもらいました。美味しすぎて実家にも送りました。今年分のふるさと納税は藁焼きワールド土佐清水の鰹たたきを頼もうと思いました。

結果的に、カツオの藁焼き体験のために片道6時間もかけているけれども、その時間も気にならないくらい行ってみてよかったと思える旅だった。

その他訪れた場所

カツオの藁焼き体験以外にもいくつか観光地を訪れ、そのうち5食くらいはカツオのたたきを食べたと思います。以下は旅行のダイジェスト写真です。

など

ひろめ市場で食べたカツオのたたき。船で乗っているのがいいなーと思い、他のお客さんにどこで買ったか聞いた

ひろめ市場でカツオの藁焼きをはしごする

グランピング施設の様子

誕生日をお祝いしてもらいました(ありがとうございます)

グランピング施設でバーベキュー

オーシャンビューの温泉でゆっくりしました(ついて即昼寝)

高知の一番の魅力は「カツオの藁焼き体験」だ

高知の観光情報等も調べていったものの、結果的に一番満足したのは「カツオの藁焼き体験」でした。カツオの藁焼き体験は、特におすすめ観光地・アクティビティとして紹介されていたわけでもなかったので、このような高知でしかできない体験も魅力の一つとしてもっと大々的に宣伝していくといいのではないかと思いました。

まずは近場の飲食店でカツオの藁焼きを食べてみて、興味を持ったらぜひ行ってみてください。私も痛風に気をつけながら楽しみたいと思います。

年始早々病院から呼び出された話 (&反省)

ことの始まり

昨年の12月初旬ごろから微妙に体調が悪いと思いながら過ごしつつ何度か病院に通っていたところ,年始早々病院から緊急で呼び出しの電話があり,肝臓の状態がかなり悪化しており入院を検討するレベルであると医者から告げられた.そこまで状態が悪くなってしまった経過を振り返り,どうして重症化一歩手前まで気づけなかったのか,自分の行動の中で発見が遅れる原因になったところを反省しながらまとめておくことにした.

経過

12月初旬

熱がないにも関わらず,毎日寝汗を大量にかくようになる.夜中に目が覚めるとかけているタオルまでびっしょりで,額に汗が伝っていてぽたぽた落ちてくるレベルで汗をかいていた.布団のかけすぎ,パジャマが厚すぎかと思い調節するが,1週間ほど改善せず.

12/17 ~ 12/22

コロナ検査やインフル検査をするレベルではないくらいの微熱が出る(37.2, 37.3℃ほど).医者に行くほどでもないと思い,市販の風邪薬を飲みながら普通に生活. 徐々に食欲がなくなり,2,3日くらい何も食べなくても食欲を感じなくなる.

12/23 - 12/27

病院へ行き,コロナ,インフル検査は陰性のため,風邪と診断. 何も食べないのもよくないと思い,少し口にすると吐き気がしてしまう.食べ物が全く消化されていかない感覚がある.一晩で2回以上着替えなければ気になるレベルの寝汗.尿に血が混じったり,色がだんだん黒っぽくなってくるようになる.

12/28

別の胃腸科系の病院に行き,レントゲン検査で胃腸炎と診断される.ほかの病気や問題だったら困るということで,血液検査を実施.血液検査の結果に問題があったら連絡しますといわれる.周りの人から顔が黄色いと指摘されるようになる (黄疸).以前より熱が高くなる.のどの痛み等が出る.

1/4

病院から電話がかかってきて呼び出される.肝臓周辺の血液検査の結果が軒並みボーダーラインを超えており,特にALTが500を超えているので数値的に入院を検討するレベルであると告げられる.大きな病院に紹介状を出してもらい,いろいろと検査を受けたところ,肝炎と脾腫を併発していることが発覚.一人暮らしやお年寄りの場合は即入院となるが,肝臓が悪いと免疫が下がっており,病院でほかの病気がうつりやすくなるため,心配なら救急をいつでも呼べるように誰かしら家にいる状態の実家に戻って絶対安静といわれる.テレワークを含め仕事は2週間禁止,薬を服用すると肝臓に負担をかけるため,薬も原則禁止,転んだりぶつかったりするのも危ないといわれて,原則寝たきりの生活となってしまった.

現在

肝臓の値が一部ボーダーラインを超えている & 脾腫はエコーやCTで見ないと改善しているかわからないため,週一で検査を実施中だが,肝臓,脾臓双方に改善傾向.運動や重いものを持ち続けること,糖質・脂質の多い食事,飲酒は制限されている.テレワーク中心に許可をされており,出張等は検査の都度行ってもいいか確認をしながら行っている.肉体労働だったらあと1,2か月は休職になっていたといわれたので,デスクワークがメインの仕事で助かった.食事制限のおかげで中性脂肪の項目が改善し,体重が5 kgぐらい減ってむしろ健康になったのではないかと思う.改善した証として,おなかが空くようになってきたが,まだ1人前の量は多いと感じる.

風邪の症状との違い

風邪の場合,熱や咳,のどの痛み,寝汗などが同時に現れて,しんどい思いをするが,肝臓を悪くしている場合は,気になるかならないかぐらいの(風邪と非常によく似た)症状がアハ体験のように気づかないレベルで徐々に出てきた.風邪と異なる症状が現れ始めたのは,血液検査で入院相当と診断された段階で,もう少し気づくのが遅れて普通に生活していたら重症化して救急搬送 & 手術となっていたかもしれないと紹介先の病院で言われた.血液検査をして電話をかけてくれた病院には感謝しかない.

もっと早く気付くためにできたこと(反省点)

今回の反省点として,自分で健康を気遣えば快方に向かうはずだと勝手に判断し,さらには新たな症状が出るたびにChat GPT (有料版)に聞いて自分で対処していたのがすべての過ちだったと思う.Chat GPTは経過観察によって血液検査等をするかどうかの判断をしてくれるわけではないし,(画像をこちらから提示しなければ)私の顔色 (黄疸)をみて診断してくれるわけでもない.聞くたびにChat GPTに再度医者に行くように誘導されていたにも関わらず,それを無視して自分で対処しようとしたのが良くなかったと思う.新しい症状が出るたびに,行ったばかりだからと躊躇せず,病院を再度受診したほうがいいと思った.最近手帳にライフログをつける習慣があるが,振り返ると1か月半くらいは苦しんでいる経過が見られ,どうしてもっと早く病院へ行かなかったのかと今では不思議に思う.

以下は相談していた内容の例.

Chat GPTに相談していた内容の例. 肝臓の機能が低下していると大量の寝汗をかくと後で医者から教えていただいた.

自分で風邪と判断して市販薬を飲むのも,肝機能をさらに悪化させる原因となった.ほとんどの薬は肝臓に作用するらしく,風邪だと思って市販の風邪薬を飲んでいたのはかなり悪手だったらしい.

振り返っての感想

そんなこともあり,年末年始はバタバタしたり絶対安静と言われたりで休めたのか休めていないのかよくわからない状態だった.電話してくれた医者は引っ越しして初めて受診したところだったので,「そんな大げさな……」と思いながら紹介先の病院に行った.精密検査の途中で「これは確かに入院かもね…… 覚悟しといてね」といわれ,大げさでなく本当に悪化しているということが分かり,電話してくれた先生には本当に感謝しかない.肝臓周辺が悪くなっていても風邪とそんなに見分けがつかず,生活しようと思えば普通に生活できてしまうので恐ろしいと思った.

送り迎えをしていた親も入院の可能性について説明を受けることになったりと,だいぶ心配をかけてしまった.入院せず自宅療養と通院ですむよう世話をしてくれた両親にも感謝したい.

今後はただの風邪に思えても,何か症状が現れるたびに医者を何度も受診して相談しようと思う.皆さんも気をつけてください.

2泊3日 スマホをおいて「どこかにビューーン!」 (in 秋田)

行き先も自分で決められない、わからないことも調べられない旅

「旅にトラブルはつきもの」という考え方は、スマートフォンが登場してからあまり聞かなくなってきています。あらかじめスマホでレビューを調べてから行けばいいし、道中で何か困ったら、スマホで調べれば解決してしまうからです。

今回は、夏休み期間中、JR東日本が主催する「どこかにビューーン!」の企画を使って、あえてスマホを持っていかないデジタルデトックス旅をテーマに2泊3日の一人旅へ行ってきました。

スマホなしで旅をしようと思ったきっかけは、何度か私生活でデジタルデトックスを試していたのと、テレ東でやっている「水バラ」のバス旅等で、スマホを禁止して地図を見ながら・聞き込みをしながら旅をしているのが大変だけど楽しそうと思ったためです。思い返せばスマホやケータイなしで自力で行動したのは中学の遠足以来となります。

「どこかにビューーン!」とは

「どこかにビューーン!」は、JRE POINTを6000 ポイント使って、ランダムに東日本の新幹線駅に行ける企画。気軽に予約でき、行き先を自分で決められない気ままさに惹かれてこれまでに4回くらい試しました。以前試した記録と、この企画の攻略法は以下にまとめています。

ryoiijima.hatenablog.com

「どこかにビューーン!」では、自分で場所を選ぶことができません。さらにスマホを持っていかないので、困ったことがあっても調べられない状態となります。あえてこれからの旅に制約を設けることで、意図的に「どうにもならなさ・ランダム性」を計画したらどうかを試しました。

今回の行き先

「どこかにビューーン!」では、候補となる駅を4つ確定され、その中からランダムに行き先が選ばれます。

今回は、秋田県大曲駅に当選しました。秋田県は去年リゾートしらかみに乗って主に秋田市付近を巡ったので、今回は田沢湖の温泉をテーマに行ってみることにしました。

行き先決定の案内

デジタルデトックス旅に必要なもの

スマホを持っていかないので、代わりに持っていってメインで使ったものの一覧が以下のとおりです。

スマホ代わりに活躍したもの

  • 時計
  • インスタントカメラ (Kodak)
  • メモ帳 (写真左下)
  • Kindle (写真中下)
  • 手帳 (NOLTY ビジネスベーシックダイアリー)
  • Suica 機能のついたカード ( 「どこかにビューーン!」の切符を紐づける必要がある )

Kindle は観光雑誌の閲覧用で、ブラウザ等は機能が制限されていてネットが使えないもの(Wi-Fi接続のみ)を持っていきました。カメラはデジカメとかでもいいかなと思いましたが、あえてフィルムカメラを使って現像までしてみたいと思い、インスタントカメラを購入しました。

でかける直前に気づいてヒヤッとしたのは、切符の座席番号もあらかじめメールで見て控えていかなければ当日確認ができなくなってしまうということです。メモ帳に照会用の予約番号を含め、座席番号や時間をメモしました。

また、万が一電話等で連絡を取らなければ行けないタイミングができたときのために、ダムフォン(電話やSMS等に機能が制限された携帯電話)を持っていきました。スマホを切ってカバンに入れるというのでもいいかもしれませんが、あるという安心感もない状態で旅してみたいと思ったので自宅においてきました。

Punkt MP02 (ダムフォンの一種)

デジタルデトックス旅 (初級編?)

デジタルデトックス旅の初級編として、今回はホテルは決定した駅の最寄りに取り、電車やバスでの移動は極力少なくなるようにしました。また、行動範囲もそこまで広げず、秋田の「乳頭温泉郷」へ行くことだけをメインにして、休むための旅・スマホから距離を置くための旅としました。

これくらいでデジタルデトックス旅の初級編となるのかもしれませんが、もっとレベルを落とすなら、日帰り旅にするとか、近場のカフェにスマホを置いていってみるとかでもいいのかもしれません。私はすでに私生活で似たようなことは試していたし、家にスマホをよく忘れてくるので、日帰りの意図しないデトックスお出かけはしています。今回はもう少し冒険しようと思い、2泊3日で行ってくることにしました。

大まかに立てていた計画

ホテルはあらかじめ大曲駅の最寄りにあるところを取ってから行き、以下のように計画をしました。

1日目

  • 13:00頃: 東京駅到着、秋田駅の地図を買う
  • 15:20 こまち乗車
  • 18:32 大曲駅到着

2日目

3日目

  • 10:00 チェックアウト後に散歩
  • 12:46 大曲→東京

かなり簡潔な計画・旅で、これくらいならスマホなしでも余裕、と思っていましたが、それなりにわからないことや困ったことはありました。

実際の様子

1日目

東京駅で地図を買おうと思って早めに到着していたものの、八重洲ブックセンターが閉店していたことを忘れており、代わりの本屋を探すのに右往左往しました。結局インフォメーションセンターの人に聞いて、丸善へ。

本屋にもあまり地図自体がおいておらず、観光案内所にある地図でいいや!と思い買わずに新幹線に乗車。

新幹線に乗車している時間のうち2/3 くらいは寝てしまったので、あまり退屈もしませんでした。

当日お好み焼きを作って食べる店に行きましたが、スマホのノリでお好み焼きの撮影に3枚も消費してしまいました。

軽いノリで撮ってしまったお好み焼きの写真 暗いとよく撮れないので、やめておけばよかった

2日目

大曲→田沢湖への鈍行列車が午前最後の出発が7:02だったので、急いでホテルの無料朝食を食べて、電車に飛び乗る。Suicaが使えなかったので、現金で切符を買うことに。

乳頭温泉郷へのバス停がわからないので駅員さんに確認し、バスに飛び乗ります。

温泉郷について、1, 2番目に行こうと思っていた温泉がどちらも休館日でした。バスを1番目のところで降りてしまっていたので、他の温泉まで歩きました。他の温泉まで行くのに山道で30分くらい歩く必要があり、意図せずハイキングをすることになってしまいました。Google mapで調べていたら気づけたかもしれませんが、こういう意図せず発生するハイキングも楽しくていいと思います。道順も工事の警備員に聞きながら進みました。

休館であることを知らずに訪れた日帰り温泉 (宿泊も可)

ハイキングの道中で日が差してきて、写真を取りたいと思ってポケットを触って無意識にスマホを探していました。そういえばなかったんだ、という行動を2,3 回はしたような気がします。

最初についた温泉で、周回バスのチケットを買ったので、最初に到着した温泉からは基本バスで移動。当然ながらバスの時刻表はもらい、手帳に挟んで都度確認しました。このタイミングで、帰りのバスの時刻表は配っていなかったので、バス停で候補となる時間を2、3つくらいメモしておきます。

時刻表 (左)と周回バスのチケット (右)

最後の温泉の日帰り客用営業が終了してから、駅へのバスまで40分近く待つため、少し散歩しました。このような待ち時間にスマホを持っていたら見てしまうだろうと思いますが、持っていないのでだいぶ時間を持て余しました。こういうただ単にぼーっとするだけの時間も大事なのかもしれないと思いました。

天然水でラムネが冷やされているのを漫画以外で初めて見た

風情のある黒湯温泉の景色

乳頭温泉郷でいちばん有名な鶴の湯。フィルム写真で現像したのもあり本当に秘境のようである

バスから撮った田沢湖の写真

フラッシュ機能のついたインスタントカメラだったが、フラッシュ機能を忘れて真っ暗になってしまった。雰囲気もよく、料理も美味しかった北野水産。

3日目

地元の本屋に寄り、野鳥に関する本を買って、近くのカフェで読みました。小さい本屋でしたが、地元の人から愛されている本屋という感じで、本もよく厳選されているという印象を受けました。カフェもおしゃれで、もともと観光雑誌にも載っていないようなところだったので、行ってみてよかったです。

ココロさえずる 野鳥ノート

新幹線が車両故障の影響で遅れ、1時間遅れで東京に到着。スマホ持ってたら絶対にこの遅れた時間で見てただろうなと思うので、持っていかなくて良かったです。その間に本を読みました。最近アイディアに関する本を色々と見ているので、アイディアに関する本を読んでいました。

Where Good Ideas Come From (English Edition)

帰宅時のDigital Wellbeing アプリの表示

スマホを電源を入れておいてきたので、アラームがかけっぱなしとなっており、時計が10分間カウントされてしまっています。旅の前の使用時間は約2-3時間くらいで、そのうち1-2時間くらいはLINE電話で実際は画面を見ていないので、実質もともとの利用時間は1日に1時間くらいでした。それでもだいぶ利用時間は減ったという実感があります。

Digital Wellbeing の表示. スマホの電源を切ってから行けばよかった

デジタルデトックス旅で得た気づき

  • 2日目辺りで、わからないことがあれば聞けばいいし、そんなになくても苦労しないなぁと思うようになりました。むしろ、調べるより知ってる人に聞いたほうが早いなと感じることが多かったです。ただ、ダムフォンにカメラと地図機能がついているといいなと思いました。地図がないことで困ることは結構多いし、カメラも撮るのにだいぶ慎重になります (枚数は全部で27枚に制限されています) 。

  • ただ、地図がないからこれだけ多くのコミュニケーションが生じたのかもしれないし、カメラが無いから、撮る必要のないものは自分の目でちゃんとみて記憶に残すという形で観光地を歩けたという可能性もあるので、そういう意味では、やってみてよかったと思います。スマホの通知を気にせずに、「つながらない権利」を行使して旅行した気分でした。写真についても、ほとんどの観光地はポストカードとか他の人が撮った写真があるし、どうせとっても後で見返さないんだよなという良い諦めをしながら観光できたと思います。

  • また、道中年配の方からたくさん声をかけられました。インスタントカメラを持っているのも珍しいし、そもそも若者があまりいないような場所だったので、珍しかったのかもしれないです。1日に合計で20人くらいと話したと思います。

  • バスに載っている年配の方は、スマホを持っていてもいじって下を向いている人は一人もいなかったです。携帯電話に高性能なカメラとLINEが追加された程度にしか思っていないので、暇つぶしにスマホを見るという概念がそもそもないのかもしれないと思いました。

  • フィルムカメラの現像を自分で頼みに行くのは初めてで、謎のワクワク感がありました(中学の頃などは学校の先生がやってくれていた記憶がある)。最近は、現像したものを印刷するのではなく、スマホ転送というオプションがあり、フィルムカメラに興味を持った若い人に人気だそうです。このブログに貼り付けた写真も現像後スマホ転送を頼んでいます。インスタントカメラの値段はだいぶ値上げしていて現在で1つ2700円程度、現像とスマホ転送で1700円程度かかることに注意が必要です。さらに印刷するともう800円くらいかかります。

  • スマホと一定期間距離をおいてみて、スマホで検索していたことって案外どうでもいいことが多かったように思います。仕事に関わる大事なことはだいたい会社のPCで調べているし、スマホは割とどうでも良くて、気になったことをその都度調べるのに使っていたのだなという気づきがありました。

これから価値が出そうなデジタルデトックス旅のサービスについて

このような旅をやるなかで、このようなデジタルデトックス旅をサポートするサービスに価値が出そうな気がします。ダムフォンも現行のものは3-5万円と高いものが多いし、レンタルして旅行の期間中は貸し出す、旅行に必要な地図とかはあらかじめ手配してくれるとか、困ったら電話すれば代わりに調べてくれる みたいな体制のデジタルデトックス旅サービスがあると、これから需要がありそうに思いました。

ツアーとしてデジタルデトックス旅を設計して、ツアーガイドがスマホを回収するという形にすると、家においてきてしまったことによる取り返しがつかない感は防ぎつつ、気軽にデジタルデトックスができると思います。そういう斬新な企画をする旅行会社が増えてくるといいなと思いました。

おわりに: これからスマホとどう向き合うか

「どこかにビューーン!」はデジタルデトックス旅と相性が良く、スマホとの向き合い方を考えるきっかけとなりました。デジタルデトックス旅を終えて、完全に元通りに戻してしまうのももったいないと思っているので、なるべくスマホを使わずに過ごす時間をもう少し継続しようと思っています。

スマホ利用のルールとしては、以下をメインに使うように設定しました。

  • マップ
  • Keep メモ
  • カメラ 
  • アラーム
  • SMART USEN
  • LINE
  • (店員さんにQRコード読み取り等を求められたときや提示を求められたときのみ)ブラウザ利用

旅行から帰ったらダムフォンはやめようかと思っていましたが、引き続き使い続けてみることにしました。スマホSIMカードを入れていないので、検索をすぐにできる環境からは距離をおいた状態を保つことにしました(Google アプリとChrome は1日の使用時間を10分に制限)。

教育の観点から、子どもといっしょにやるのもいいかもしれないし、学校の遠足でもあえて地図を渡してスマホを回収して旅をやってもらうというのもいいと思います(今の学校はどうやって遠足や修学旅行をしている?)。将来自分に子どもがいたら、子どもの前ではスマホをいじらないようにしたいなと思ったし、これからも、身近にいる人の前でもできるだけスマホを見ない生活を送りたいという気持ちが強くなりました。

ここまで読んでくださりありがとうございました。みなさんももし興味があれば、あえて自分に制約を課す旅をやってみてください。

秋田のお店等でもらったチケットの記録を手帳に貼った。このご時世、アナログデータのほうが希少性が高いかもしれない。